外伝 夢のまた夢、そのまた夢 ―??? 明るい世界。白くぼやけておぼろげで。 重い身体。寝ているらしい身体を起こそうにも言うことを聞かず。 誰かが泣きながら名前を呼んでいます。 それは悲しみの涙ではなく喜びの涙。 無理やり笑顔を作ってみました。たぶん、上手くいっていないかも。 とても眠くて、輪郭しか見えない誰かに応えようとしても限界でした。 私の上に突っ伏して泣く誰かの重みも目に沁みる光もひどく懐かしく感じます。 ……なぜでしょう? 脳内に流れ込む情報が久しぶりに多くなりすぎて混乱しています。 ……久しぶり? なんとなく、懐かしいような。 はて、と首を傾げようとして上手くいかず。 相変わらず重い身体は言うことを聞きません。眠いせいでしょうか? ちょっと眠りますと声を出そうとして、それすらも忘れてしまったように舌は動かず。 仕方ないのでそのまま意識を手放しました。 意識が消える直前、私を抱きしめた誰かの手はとても安らかな気持ちになれるものでした。 ―??? 見慣れた天井、いつもの部屋です。 山の廃校の一室。用務員室ですね。相変わらず音夢ちゃんは私を抱き枕にしています。 何とか起こさないようにそこから抜け出し空中へ。 ……何かおかしな夢を見たような気がします。 「赤巻紙青巻紙黄巻紙。バスガス爆発。ん、普通にしゃべれますね」 身体も重いなんてことはなく普段どおり浮いています。視える世界もいつも通り。 因果の糸も切り替えも自在。 「なんだろう……違和感?」 いつもと違うような小さな引っ掛かりがあります。 しばらくそれが何か考えてみましたが埒が明かないので放棄。 音夢ちゃんが起きるまではもう少し時間があります。それまでは寝顔を眺めて過ごす事に。 何も変わらない日常ですね。 幽霊の私、音夢ちゃんと妖怪変化の取り巻く日常。 夢のシーンがフラッシュバックしました。 ――本当に? 無いはずなのに高鳴る心臓。息が苦しくなって無理やり深呼吸。物理的に呼吸するわけではないのですが気分を落ち着けるのには役立ちます。 1分くらいで落ち着きを取り戻しました。 「ん……おはよ、詩乃」 そうこうしているうちに音夢ちゃんが起きてしまいました。 「おはようございます、音夢ちゃん」 「どうかした? 何か雰囲気違うけど」 む、スルドイ。音夢ちゃんはまじまじと顔を見てきます。 何故か私は避けるように顔を背けます。 「何でも、ないですよ」 ガシっと顔を両手で挟まれ無理やり正面向かされました。 「目を見て言ってみて?」 怪しすぎたみたいですね……。 「ただ、夢見が悪かっただけですよ。あんまり良く覚えていませんが」 本当のことです。これがリアル―現実―であれは夢。 「ふーん、どんな夢?」 「だから良く覚えていないですよ。ただ……」 「ただ?」 「妙に身体が重くて、妙に世界が明るくて、それを懐かしく思ってしまうのです」 しばらく使っていなかったから忘れてしまっていたような。 「……まるで、生きている時の感覚のように」 変な、夢、ですね。 「……」 「音夢ちゃん?」 「詩乃は……ソレが夢である方がいい? それとも、夢のであるがままがいい?」 「え?」 どういう意味でしょう? 「さ、学校いって来るわね」 「え? え??」 混乱する私をよそに音夢ちゃんは普段どおり制服に着替えて化粧して出かける準備。 「あ、そうそう。気になるなら病院で診て貰えば?」 「あ、はい。そうしますね」 「じゃ、朝ちょっと寄り道があるからもう出るわ。また後でね」 「いってらっしゃい」 送り出して気づきました。 「私、幽霊なのに病院いってどうするのでしょう?」 そもそも、死んでいる私が病院に行くのも何か不吉なので幽霊になって以来行ったことがありません。まあ、行く意味もないですし。 ―病院上空 行く意味もないし、幽霊なんてのがいる場所でもないのですが。 「何で来てしまったのでしょうね、私って?」 問いかけても答えは返ってきません。私一人しかいないので。 疑問は疑問のままなのに、辿るべき糸は見えている現実。 この目はたまに見たくないものも見えるのです。 わかりたくないものも見えてしまうのです。 意図に導かれるまま向う病室。 寝ている女性。僅かに上下する胸は生の証。けれどその身体に生気は無く。 「どう言うべきなのでしょうか?」 女性に問いかけても答えは返ってきません。 「とりあえず、ただいまにしておきましょうか……」 糸を辿りその終端へ。 ―病室 「お……かあ、さん」 長く使われなかった舌はまともな言葉を紡げずに。 「詩乃……詩乃!!!」 抱きつかれた腕は心地よく。 「そ……に、泣くと―だいな、しですよ?」 帰ってくるのは嗚咽のみ。 母の泣き声、触れ合う温もり、病院の看護師がなにやら騒ぐ声。 どれもが生きているという実感を持たせます。 懐かしいソレは○○だった時には―― あれ? 何だったのか。何か不思議な体験をしたような…… アレは――ユメ? ○○ちゃんとの日々も霞の中。○○○○の跋扈する町も霧の中。 スベテハ――ユメ? 「という夢を見たんですよ」 「……ややこしいわね」 「ですよねー、私もそう思います」 「で、試しにでも病院には行ってみた?」 「いえ、行っていませんよ? だって嘘ですし」 「……は?」 「今日は4月1日だったりします。ほら、カレンダー」 思い切りほっぺたを抓られました。 |
あとがき むしゃくしゃしてやった後悔はしていない。 とは言えない。 更新がもう夕方とかね…… |