『生きる意味・後日談』
あの時の心の傷も癒え、落ち着きを取り戻し始めた頃、俺は一人の女の子と出会った。
それは公園での出来事。
その子は、周りからいじめられ、いつも一人だった。
いつも一人で遊んでいた。
俺はその子に話しかけてみた。
すると、その子は何かに怯えるように、俺を拒絶した。
俺が初めて聞いたその子の声。
「誰? あっちいって!」
だが、俺は何故か諦めなかった。
同情でも、自己満足でもない。
諦めたら、何かが終わってしまう。
そんな気がしたから。
だから俺はこの子と遊んでやりたいと思った・・・ただそれだけだった。
その後、俺は何度もその子と会った。
いや、その時には既に自分から会いに行っていたんだと思う。
そうする内に、初めは拒絶を繰り返した女の子も、次第に心を開いていった。
遂には、まともに会話できるほどに仲良くなっていた。
俺はその子とよく遊んでやるようになった。
どうしてだろう、俺にもよくわからない。
ただ、その子が俺と遊んでいる内に、よく笑うようになっていた。
それが嬉しかっただけなのかもしれない。
ある時、その子が俺に尋ねてきた。
「おにぃちゃんは、どうして私と遊んでくれるの?」
俺は戸惑った。
その子が好きだから・・・・・・違う。
寂しそうだったから・・・・・・違う。
いじめられていたから・・・・・・それも違う。
その時は結局「暇だったから」と軽く流していた。
だがある時、その子の姿に博之の影を見たんだ。
いや、姿ではなく、時折虚ろになる瞳に・・・・・・
ある時、俺は思い切って訊いてみた。
「お前、何か悩みとかでもあるのか? 俺でよかったら聞いてやるが・・・」
それを聞いた瞬間、その子は突然泣き出した。
俺はそっと抱きしめてやった。
「泣きたいなら、好きなだけ泣けばいい」
状況に酔っているわけではない。
普段の俺なら絶対にこんなことはしないはずだ。
でも、多分寂しかったんだろう・・・・・・そう思って、俺を拠り所にさせてやったんだ。
その子は、ただ優しさを求めていたんだ。
でも、誰もその気持ちに気付いてやれなかった。
だから、そのことに気付いてやれた俺が、一緒にいてやる。
そう誓った。
その時俺は、ある事に気付いた。
もしかすると、博之もこんな気持ちだったんじゃないか・・・・・・って。
あいつも昔、周りの奴らからいじめられてた。
そこに出て行ったのが俺だったんだ。
その時からだ、あいつと親友って呼び合える仲になったのは。
その日、家に帰った後、俺は泣いた。
誰にも聞こえないように、暗い部屋の中で。
今更になって、こんな簡単なことに気付いている俺に。
助けられたかもしれない奴を、俺があまりに下らない理由で助けられなかったという事実に。
俺はその時から、あの子を守ってやろうと決意した。
一緒に遊んで、友達も作って、また一緒に遊んで・・・・・・
今は、あの子が望むなら、あの子の親代わりになってやってもいいと思っている。
多分、これが俺にできる、あいつへの償いだと思うから。
それで許しを請うわけではないが、自分の至らなさの生み出した結果なら、償いたかった。
だから俺は空を見上げて、一言叫んだんだ。
「これでよかったんだよな、博之!」
天まで届け、俺の想い!
あいつの元まで、この子との幸せが、漏れることなく伝わるように!!
その時俺は、初めて生きる理由を見つけた。