第13回 落城


―エデン 最上階
「……とはいったものの……」
ぶうんと空を切り恐ろしい勢いで迫る巨大な拳を紙一重で避ける。拳はまだマシ。額の赤い石から放たれる光学兵器は鋼鉄の床すら溶かす。直撃せずともかするだけで焼き払われるだろう。
「こんな化け物、どうしろと?」
悪司は思わずぼやいた。体格差は十数倍。攻撃レンジも長い。最初に一撃、腹の辺りに打ち込んでみたがちっとも堪えた様子も無い。こっちは小回りが利くためそれを利用したヒット&アウェイの戦法をとる。が、一撃が小さく巨人は揺らぎもしない。
唯一の大火力たる殺のロケットランチャーも残弾が尽きた。その虎の子の砲ですら鎧の一部を剥離させる程度の威力しかない。
『はははっ、挙句がいい、雑魚どもが!』
「もう、むかつく!」
炎の矢と氷の矢の同時発射、急激な温度変化に脆くなった部分を大きく切りつける。だが、その傷も見る間に修復される。
「弱点はわかるんだけどね……」
誰もがワーグと同じことを考えた。胸についた青い石、その中にいるイハビーラこそ弱点。だが、相手もそれは承知の上。戦闘が始まるや否や分厚いプロテクターに覆われてしまっている。
「あれをこじ開ければなんとかなるだろうが……」
それをやってしまうであろう人物は後方で戦っている。
「無敵! 早くきなさいよ!」

―3F ラボ
「せいっ!」
巨大な培養槽の影に隠れつつ迫るB3号、中〜遠距離から炎を吹くB5号、空中からの牽制を主とするB4号そのコンビネーションに無敵は手を焼いていた。
地の利も相手にありまともな反撃が出来ない。
無敵も土岐も傷はないが時間の問題と思えた。
「土岐さん、まだ持ちますか?」
お互いに背中合わせ。後ろの守りは互いにまかせきり。
「ま、まだ大丈夫です」
そういうが、土岐の息は荒くもう先が無いのは明白だった。この狭い屋内では彼女の得意とする高機動戦闘が難しいのもある。遮蔽物だらけで回避にもスピードが上がらない。
その上、相手は地形を把握し利用しつつ攻撃を仕掛けている。
攻撃を避けきれなくなるのも時間の問題だった。
「5秒ほど敵をひきつけられますか? それで決めます」
「……たぶん。……いえ、やります」
言うなり土岐は遮蔽物が破壊され出来た空間に飛び出す。空間といっても高機動戦闘を行うには不十分。そして、敵の攻撃をさえぎる物もない。
そんな状況にも関わらず刀を鞘に納め目を閉じる。

残り4秒。あまりの無防備さにBシリーズの注意が無敵から反れた。
お互いに何をやるかなど知らない。だが、阿吽の呼吸で動く。
残り3秒。攻撃対象を土岐一人に絞り、Bシリーズが同時攻撃を仕掛ける。
土岐は刀に手をかけ踏み込みの構え。無敵も刀を納め精神統一。
残り2秒。土岐が目を見開き踏み込む。
「疾風の――」
抜刀。全身全霊をかけた居合いの一撃。狭い空間で最高速に達する唯一の手段。
「――剣!!」
3方向同時攻撃のたまたま土岐の正面に位置していたのはB5号。敵を焦がさんと噴出した火炎は土岐が纏った疾風にほとんどかき消され、土岐の姿を視界に捉えることも無く首が宙を舞う。
残り1秒。土岐は土岐で、必殺技の勢いが殺せずB5号の背後にあった巨大なガラス管に頭からつっこんだ。そして、その音で何が起きたかようやく気づいたB3号と4号が立ち止まりそちらを向く。
カウントアウト。その隙はどうみても致命的だった。二人そろってすぐ側にいて同じ方向に注意がそれている。土岐はおとりをこなした上、一人倒してのけた。
「柳生流居合術・風薙ぎ!!」
神速の居合いに乗せられ放たれた闘気の刃はその直線状にいた残りのBシリーズを容赦なく切り裂いた。

「……ふう。何とかなった。土岐さん、大丈夫ですか?」
「な、なんとか……」
ガラス管に突っ込んだ時にあちこち切ったようで服はボロボロ、全身血だらけという有様。
幸いそれぞれの傷はさほど深くは無いようだ。
「とりあえず、手当てをしてしまいましょう。すぐに動ける怪我でもないでしょう」
「はい。……つぅ〜」
「消毒薬くらいしかありませんが無いよりマシでしょう。さ、服を脱いでください」
「え? ええぇ〜〜!?」
「……あ、その、失礼しました。他意はありません!」
あたふたする無敵。
土岐は土岐で赤くなったりうつむいたり視線をそらしたりと挙動不審。
二人ともここが戦地だということを失念していた。
「え、えっと……無敵さんになら……その……あの……大丈夫です」
「え? ほ、本気ですか?」
「うぅ……たぶん……」
気恥ずかしくて無敵からそれた土岐の視界。その端に何かが動く。
それが何か認識する前に土岐の身体は動いていた。
無敵を引き寄せ、かばうように抱き寄せる。

――ずぐっ。

B4号が残る命を燃やして投げた槍は無敵をかばった土岐を貫き、そして無敵をも貫いていた。
たまたまB3号とB4号はすぐ隣にいた。そして、無敵から距離はB3号の方が近かった。
無敵の一撃が放たれた時、3人の位置関係は直線上。B4号はB3号が盾になったおかげで即死は免れた。とはいえ、致命傷に変わりは無く。
槍が命中したことを確認することも無く、その命は尽きていた。

「と、土岐さん……?」
反応は無い。土岐の身体はもう数分ももたないだろう。
「っく……」
二人の身体を縫いとめていた槍を引き抜く。無敵の方に深刻なダメージは無い。数分休めば動ける。
だが、土岐の出血は止まらずどう見ても致命傷だった。
ぎりっと、無敵の歯がきしむ。自分の方が頑丈なのにかばわれてしまった。戦地にもかかわらず警戒を怠った自分の愚かさに腹が立った。
次から次へと溢れてくる土岐の血液。
一瞬の思考の後、無敵は土岐の服を一部破り捨て傷口に直接口をつけた。
そして、貪るようにその血をすする。同時に心の中は冷め切っていく。
自分がもう、吸血行為に抵抗をおぼえなくなっていると知り自己嫌悪する。
誰にも見られたくない姿だった。
存分に血をすすったあと、無敵は口を離した。
先ほどはあった生命活動ももはやほとんど停止している。
「……この世界では効果がないかもしれない。……もし、効果があり生きながらえても彼方は人でなくなる。それでも、こんな死に方をして欲しくないんです。……これはエゴだと分かっています。それでも――」
無敵は手首を浅く切り、溢れる血を土岐の胸に空いた穴へ流し込む。
すすった血を自分の物として、魔人の血液として注ぎ込む。
「自分勝手なのは承知です。どんなののしりも侮蔑も甘んじて受けます。ですから……戻ってきてください」
無敵がとりえる唯一の延命処置だった。だが、同時にそれは契約でもある。
ぴくんと、土岐の身体が反応した。
胸に耳を当てると力強い鼓動が聞こえだす。適合。しかも、かなりの相性らしい。
かなりの速度で血が馴染み、全身の傷が修復されていく。
「……よかった……」
「あれ……れ? 私……」
「もう、大丈夫ですね。しばらくは変化の影響で動けないと思いますが」
土岐は自分の身体をまさぐる。どこにも怪我はなく、致命傷となった槍の痕もない。
どこを触っても年相応の張りのある肌だった。
「そ、そんな……」
「身体に異常はないですか?」
「ないというか……怪我もないような気が……」
「……僕は、僕の世界では魔人と呼ばれる存在です。魔人はその血を他の生き物へ与えることでその生物を何段階も上の魔人の使徒と呼ばれる存在に進化させることが出来るのです。そうなれば高い戦闘能力はもちろん、自然治癒能力なども飛躍的に向上します」
「つまり……」
「命を繋ぐため、彼方を使徒化しました。……自分勝手なのは百も承知です。どんなののしりでも甘んじて受けます」
「……ののしったりしません。……ありがとうございます、命を救ってくれて」
「今は……休んでください。今後のことは帰還後に」
「はい……」
無敵はほとんど動けない土岐を背負いリセット達の後を追った。

―指令室(?)
「……あれ?」
最上階、最奥の目的地。そこへ繋がる扉を開けたはずなのだが。
「なんですか、この空間とでかいのは?」
思わず呆然としてグナガンを見上げる無敵。部屋の床のあちこちが溶解していたり、巨大な存在の下半身がなんか明らかに下のフロア以外のところから見えていたり。
「あ、遅いゾ、無敵!」
何とかイハビーラの閉じこもったプロテクターを破壊しようとその巨体に張り付いていたリセットは無敵の姿を認めるとすぐさま側へ。
「姉上、ご無事でしたか。しかし、これは?」
「さあ? 大方ラスボスでしょう。変わることを望まない世界が用意した最後の抵抗力じゃないかな。ま、無敵が来たんならもう終わりね。さっさとしとめましょう」
「弱点のめぼしはついてるのですか?」
「あからさまに守ってるからこじ開けてしまいましょう。やれる?」
「はい、もちろん。ワーグ、土岐さんをお願いします」
「いいけど、無敵……この女……いや、今はいい。さっさと終らせなさい」
ラッシーに土岐を預け無敵は最前線にいる悪司の側へ。
「お、ようやく追いついてきやがったか」
「存外に苦戦しているようですね」
「さすがにこれは初めての経験だからな」
会話の間にも巨人の拳と床をもとかすレーザーが降り注いでいる。
だが、二人にはあたらない。
「あの操縦席を守る装甲が厚くて手が出ん。はがせるか?」
「ええ、やりましょう。ですが、とどめは彼方に」
「は?」
「この世界は彼方たちの世界だ。そして、アレは彼方たちが永遠の輪から脱するための試練でもある。僕たちにとっても邪魔ですが、カッコいいところは譲ります」
「よく分からんがいいだろう、任された」
「では」
『ふん、一人増えたところで!』
イハビーラは急接近する無敵のみに攻撃対象を絞り集中攻撃する。
連続で振りぬかれる巨大な拳。――回避。
口から吐き出される火炎弾。――武器で迎撃、打ち払う。
額から放たれる高出力レーザー。――回避。
『ば、ばかな』
「そのセリフ、死に際の悪役の物ですよ?」
無敵はグナガンの懐に入り込む。
『く……死ねぇ!』
迫り来るモノに対する恐怖からイハビーラは必死に巨人を駆る。

だが――

「そろそろ幕です。彼方には退場していただきましょうか」
握りつぶそうと振るった腕を足場に、無敵はグナガンの身体を駆け上がる。
「煌神――」
ほんの一瞬で無敵の位置は操縦席同じ高さに。
「羅刹!」
恐ろしいスピードで繰り出される連斬撃。今まで傷一つ付かなかったプロテクターが無残に砕け散る。
露わになったキャノピー越しに見えるのは呆然とするイハビーラの顔。
「山本悪司、とどめを」
悪司は無敵を追従していた。わずかにタイミングを遅らせることによりグナガンからの攻撃をやり過ごし、攻撃のタイミングを見計らう。
そして、プロテクターを破壊した無敵の肩を最後の足場に悪司が跳ぶ。

「大――悪――司!!」

轟音と共に必殺の拳が宝石を砕いた。



『あーあー、マイクテストー。うん、聞こえてるかな? とりあえず、エデン兵士諸君に告げます。司令官からの命令ですぐさま戦闘行為をやめるようにと。まあ、リセットの言葉じゃ信用できないでしょうから本人に言ってもらいましょうか』

「由女……」
「陽子さん……」
エデンの隠し部屋の一室、抱き合う由女と古宮を少し羨ましげに見つつ月ヶ瀬寧々はエデン中に流れている放送を聞き入る。

『イハビーラだ。全兵士に告ぐ。直ちに戦闘行為を停止し通常業務へ戻れ。今夜は何もなかった。嵐が来て天候が不順でキョウへとの連絡も取れなかったが今夜は何もなかった。いいな? 各員肝に銘じておけ』

わけが分からず武装解除する兵士たちを横目に後方で戦っていた鬼門とビノノン王は大の字になって倒れこんだ。
「あ〜、終った。さすがに動けねぇや」
「うむ、間に合ってよかった。あと10分持つかどうかもわからんかったからな」
「確かにな……。ああ、寝たい。とにかく寝てぇ」
「……そうだな、わしも疲れた。この国は若き者に任せて眠るとしようか」
「ん?」
言葉に不信なものを感じた鬼門は横に倒れているビノノン王の方を見る。
カラリと仮面が落ちた。
「……なんだよ、消えるにしてももう少しやり方があるだろうよ……」
小さくため息をつき、鬼門もまた目を閉じた。
「はにほー」
「はにほー」
「はにほー」
「はにほー」
「だぁーーーうるせー! 寝かせろ!」
「あいやー」
いつの間にか大挙して現れたハニー達。彼らはビノノン王の仮面を恭しく持ち上げるとはにほーはにほーと歌いながら去っていった。
「……うにゃ? ここはどこっすか?」
残されたのは大の字になって眠る鬼門と本来の意識を取り戻した森田愛。

―指令室
「……これでいいだろう?」
イハビーラはマイクの電源を落としリセットを振り返る。
「約束通り解放しろ」
「ん? 捕虜が何を言ってるの? あれだけリセットたちに手を焼かせたのに無罪放免とでも?」
「それに、貴女は信用できません。もうしわけありませんが相応の対応を取らせていただきます」
ワーグとリセットの指示でその場にいた悪司達は無敵から目を逸らす。
その行動に注意を引かれたイハビーラは直後見てはいけないものを直視した。
紅く光る目。人ではないバケモノの目。
イハビーラ・メッコーは元々男性である。今はその意識をマイクロチップに移し、他の女性の身体に埋め込み乗っ取ることで生きながらえてきた。つまり、本体はただの情報に過ぎない。痛みを感じるのは奪った身体のみ。恐怖を感じるのも身体のみのはずだった。
だが、『彼』自身がその目に引き込まれる。強引に何かを奪われていく。
目を逸らしたいにもかかわらず身体は彼の意に従わない。
「命じる。以降は僕の命令にのみ従い行動せよ。まず、オオサカ市内に配置された兵士を全員撤退させ地域管理組合との戦闘を即座に中止、これ以降それを禁止する。続いて、地域管理組合の活動に関してエデンは不干渉を通すこと。あと、貴女が行ってきた実験データ等は全て破棄するように」
「はい、分かりました」
イハビーラは人形のように無表情。無敵の魔眼で完全に意識の自由を奪われた。
「……あまりこういったことはやりたくないのですが。……今回は諦めてください」
そう締めくくって無敵は魔眼の使用をやめた。重かった空気がはれる。
「あ〜、なんというか。人間じゃないのは知っていたが……」
「そうですね。最近再認識させられています」
「ま、人間だろうが魔人だろうがリセットの可愛い弟で無敵なのは変わらないけどね。さて、山本悪司。ここは無敵の傀儡に任せて今後のことを決めに戻りましょう。どうも、リセット達はすぐに帰れるようじゃないみたいだし」
歴史は変わったはずなのに、リセット達に変化はない。
「戻るって、どこへ?」
「とりあえず、ミドリガオカのあんた達の本部でいいわ。帰り道後方で戦ってた連中を回収しながらね」

―道中
ヤマトのメンバーも悪司組のメンバーもぐったりと疲れた様子で帰路につく。
「で、無敵。その女どうする気?」
土岐を見るワーグの視線は何故か冷たい。土岐は思わず無敵の影に隠れた。
「え……その……使徒化した責任があるので――」
「つれて帰るどころか私たちが帰れる補償も今は無いわよ?」
そう。だからこうしてねぐらにしたヤマトの本部へ歩いているのだ。
だが、それにしてもワーグの機嫌が悪い。無敵にはその理由が分からず混乱するばかり。
理由を知るのはリセットくらいだ。
「無敵ってパーパと違った意味で女泣かせね」
「ちょっと、姉上!? どういう意味ですか!?」
「ん? 言葉通りよ」

そんなやり取りを悪司と殺は少し後ろから見ていた。
「しかし、よく分からない連中だなこいつら」
「ああ。だからこそもう少し見ていたい気もする」
「味方に引き込めばかなりの戦力だが……」
「おそらく無理だろうな。それより悪司。共闘の礼くらい言ってくるべきだと思うが?」
「ん? ああ、そういえばごたごたしていて何も言ってないな」
リセット達に追いつこうと悪司と殺は歩を進める。
だが――
「な? 何だ!?」
近づけない。それどころかリセット達の輪郭が徐々にぼやけていく。
同じように土岐も焦っていた。置いていかれる。そんな焦燥感に駆られ走る。だが、距離は近づかず少しずつ離れていく。
「悪司、これを投げろ」
「投げろってさっちゃん、下手な衝撃を与えると爆発しないか?」
「早く」
「お、おう」
悪司は殺からロケットランチャーを渡され言われたとおりに。
「リセット!」
殺が声を張り上げる。
それに気付いたリセットが振り返りようやく状況を知る。
「受け取れ! 共闘の礼と餞別だ!」
「え、ちょっと、それは投げる物じゃないでしょう!」
飛んできたロケットランチャーはラッシーが受け止め事なきを得た。
「プランナー! 戻すなら戻すといいなさいよ!?」
『あれ? 青葉から伝わってない?』
「ない」
『そうかい。とりあえず、戻せるから戻すよ』
「ちょっと待ってください!」
『え、悪い。止められない』
「くっ……」
無敵は振り返りもと来た方に走り出す。
土岐との距離は狭まらず僅かずつ遠のいていく。
「無敵さん!!」
「土岐さん!」
互いに差し出す手は触れることなく。
無敵は立ち止まり叫んだ。
「必ずまた迎えに来ます! だから――」
言い切る前に世界が歪む。この世界に飛んできた時に味わった感覚。
「かな……ら……ず……」
そして、無敵は意識を失った。

「しかし、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して消えやがったな」
「うむ。だが、我々は今までどおりにやるだけだろう」
もう、リセット達の姿はない。少し前方では土岐が途方にくれているだけ。
「オオサカの制覇はほぼ成った。だが、まだPMが残っている」
「それに、とりあえず共闘関係にはなったが那古教とか市議会とかはあいつらの制圧下にあるままだしな」
「ああ。だが、今日は帰ろう。色々ありすぎて疲れた」
「おぶってやろうか?」
「……頼む」
殺は悪司の背中に背負われ別の背中の感触を思い出す。ちょっとドキドキした。
「だが、私はこの背中の方か良い……」
「ん? なんか言ったか?」
「いや。何も」

「無敵さん……必ず、約束を守ってくださいね。……待っていますから」
使徒化に伴って流れ込んできた知識。
年を取らず、ほぼ不死の身体。人間を上回る力。
人ではない身体。
「私が一人にならにうちに迎えに来てください」
呟きは誰に聞こえることもなく空に消える。
後ろから差し伸べられる手。
土岐はそれを取り立ち上がる。
「遥さん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。由女様こそお体に大事はありませんか?」
今は信頼できる仲間がいる。守らなければならない人がいる。
だから、今は耐えられる。
「待っていますから……」
「え?」
「ふふふ、何でもありません」

―???
「何とかなったみたいだね」
「まったく、遅い。リセット達がどれだけ苦労したと思ってるの?」
主に苦労したのは無敵なのだが。もちろん誰もそれをつっこまない。
「まあまあ。少しは力になったでしょ? そう思って諦めてくれ。あれは事故だったんだから。それより、何も言わずこれを視てくれ」
何も無い空間にどこかの様子が映し出される。
「きゃー!? パーパだ!!」
画面に映し出されるのはランスと誰かが戦うシーン。
「今の彼じゃアイツを殺しきれないかもしれない。だから切り札たる君達が予想以上に早く必要になったんだ」
「切り札?」
「アイツの想定しない、あるいは出来ない戦力としてのね」
「……ふ〜ん? なんだかよく分からないけどパーパがピンチだから助けに行けって事ね?」
「そのようですね」
リセットは殺から受け取ったロケットランチャーを担ぎ、無敵は抜刀、戦闘態勢に。
「アイツ……私の力が効きそうに無いから私はパス。プランナー、特等席を用意してね」
「はいはい。では二人とも。準備はいいか?」
「オッケー」
「はい、いつでも」

異世界をかき回した武勇伝は終わりを告げ、舞台は二人の世界へと続く。

「パーパ、すぐに行くよ!」
「父上、すぐに参ります!」
「ま、二人とも適当に頑張って。ワーグは観戦しとくから」

あとがき

と、言うわけでなんだか消化不良のままリセット編は終わりとなります。
……いや、まぁ、少しは補完する予定ですが、それはまだ先のお話。
このまま二人の世界を完結まで進めたいと思っています。


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