天使病
あるいはプロローグのようなモノ 流行病・AG20033076号に関する調査報告 @発生時期 この病が流行りだしたのは先の第三次大戦の終結後であり、某国の生物兵器ではないかとささやかれたこともあったが第一号患者の発症が戦闘地域から程遠く戦闘を行っていた国との接点もないため、生物兵器の線は薄い。 A症状 第一段階は風邪と同じで、発熱、咳、頭痛等である。この期間はほとんどのケースで10日前後続く。潜伏期間も同じくらいで10日前後であると推測される。 第二段階で体中に原因不明の激痛が走る。その痛みは耐えがたく、現段階までで20%の患者が初日でショック死、あるいは発狂してしまう。痛み止めの投薬や麻酔は無意味。この段階ですでに我々にできることは少ない。この期間も平均で10日ほど続き次の段階に移行するころには50%の患者が衰弱死する。 第3段階……否、最終段階と呼ぶべきか。この段階での致死率は100%。現在までの発症数10万例のうち現在まで生きているものはいない。最終段階に移行する直前、第二段階の激痛は嘘のように消える。が、喜ぶ患者をあざ笑うかのように『それ』が生まれ出る。 『それ』こそが天使病と呼ばれる所以であり『それ』は患者の腹を突き破り、羽を生やした赤子が生まれ出る。同時に患者の内臓のほとんどが消失、心臓も消えてしまうケースがほとんどで患者は即死する。そして、生まれでた『それ』は音もなく大気中に消えてしまう。それゆえに調査は進んでいない。『それ』の捕獲が出来れば、解剖し構成する物質の調査が出来れば治療への手がかりがつかめるかもしれない。なお、今のところ患者の内臓が『それ』に変換されているという見方が強い。 B感染源・感染ルート 患者に共通点はなく接触感染はありえない。ほぼ確実に空気感染と思われる。 感染という単語を用いたが原因となるウイルス、病原体等はいまだ発見されていない。ナノマシンという見方もあるがこちらのほうも見つかっていない。 C追記 患者から生まれ出る『それ』を患者が呼ぶように『天使』と仮称する。この病気の正式名称はまだなかったため、以降『天使病』と称する。 以上、報告を終わる。 |