―隔離病棟304号室(第一段階)

わたしのなかにてんしさまがいる。

びょういんのかくりびょうとうっていうところにいれられて、だれもあいにきてくれないけどわたしはさみしくなんかない。

だって、てんしさまがわたしのなかにいるもの。

パパもママもてんしさまといっしょにてんごくにいった。
わたしももうすぐつれていってもらえる。

まちどおしいの。どんなてんしさまがうまれてくるのかな?

でも、せんせいやかんごふさんはわたしをみるとかなしそうにめをふせる。
どうして? ってきいてもおしえてくれない。
ただ、はやくびょうきをなおしましょうねっていうだけ。

わたしはなおってなんかほしくない。
てんしさまがいなくなっちゃう。
はやくあってみたい。
てんしさま、てんしさま。はやくでてきてくださいね。


一家そろって発病し、今はこの少女一人を残すのみ。そして、少女はこれから自分に訪れる運命を知りはしない。もしかしたら、知らないふりをしているのかもしれない。
発症から三日はやくも風邪の症状が治まってきた。第二段階は近い。この少女がどうなるのか、壊れてしまうのか、命を落とすのかそれは分からない。あるいは激痛に耐え、少女の望む『天使様』と対面するのか。
……分かっても我々にできることなど何もない。
どれにせよ少女の未来は暗い。
手の施しようのない病『天使病』。なんとも皮肉な名前だ。
いっそのこと『死神病』でもよかっただろうに。
いくら神々しい姿でこの世に生まれ出でようともあれは天使とは思えない。
しかし、少女はそれにすがり生きている。天使の姿を偽った死神に。


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