――アールコート勝利編

妨害したにもかかわらず、幸運の女神はアールコート様に微笑んだ。
ダイスコントロールをしなかったにもかかわらず出目は5。ぴったり上がりの目だった。
アールコート様は出ると思っていなかったのかその場でへたり込んでしまった。
「どうした、アールコート。お前の勝ちだぞ」
ランスが声をかけてようやく正気に戻り立ち上がる。
「レナさん、後で少しお話があります」
すれ違う際囁かれた言葉。正直怖かった。
「さて、賞品をどう扱う気だ?」
「……その……もちろん、独り占め、です」
アールコート様の言葉と共に彼女以外はどんよりムード。カミーラ様やワーグ様はさっさと部屋を出て行ってしまった。
私も脱いだ服を回収し出て行こうとした。
が。
くいっと、袖をつかまれる。
……振り返ったら喰われる。そんな気配がした。
「結果的に問題はなかったですけど……さっきの妨害のお礼はさせてくださいね?」
「……出目のコントロールはイカサマでは?」
せめてのもの抵抗をしてみる。
「お互い様でしょう?」
と、にっこり笑うアールコート様。
ああ、その邪気の無い笑みは下手な武器よりアブナイです。
せめてもの抵抗は完全に無駄だった。

――アールコート様の寝室
……非常に疲れた。
あの後ランスと共にこの部屋に連行され、あろう事か二人の情事を見学させられることになった。
……精神的ダメージの非常に大きな拷問だ。
やはり、アールコート様を怒らせるのはまずい。普段おとなしい分爆発した時が恐ろしい。
事が終わり、二人が抱き合って眠っているのを確認してから部屋を出る。
一秒でも早く夜風に当って身体の熱りを取りたい。
言っておくが別にランスに欲情したわけではない。
魔人となって子孫を残すことに意味があるのか、あるいは可能なのか微妙なところだが私も女だ。
それゆえのただの生理反応。
私が惚れたのは転生後のアイツだ。今のアイツは私の知らない転生前の過去の記憶が大部分を占める。同一人物であり、ある意味別人。
ゆえに、他の魔人からライバル視されるのは正直筋違いなのだが。

筋違いなのだ。そうに違いないのだが……。
少しだけ、心のどこかがちくちく痛んだ。

ふぅ……シャワー浴びて寝よう……。

アールコートエンド

書いてて思った。ちょっと怖い人になりすぎた。

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